プレトーク/シンポジウム/ラウンドテーブル「近現代って何?―コレクションを/から考える新しい美術館」
この一連のトークイベントは「今開館する美術館が、これからどんな場所でありうるべきかを話し合うということ」を軸にして、理論と実例、これまでの美術館、これからの美術館という3つの視点から考えることを大きなテーマとしています。
1つ目の「プレトーク」は、当館と同じく「近現代」をテーマとする2つの海外の美術館の取り組みをレクチャー形式で聴き、理論と実践について考えました。2つ目の「シンポジウム」は、日本の美術館がコレクションしてきた「近現代」作品やその収集の背景を共有し、美術館のこれまでの歩みについてのシンポジウムを開催しました。そして今回いよいよ公開となる3つ目の「ラウンドテーブル」は、長谷川新さん(インディペンデントキュレーター)、田村かのこさん(アートトランスレーター)を共同モデレーターとして迎え、日本各地から美術館学芸員が集い、「これからの美術館」についての濃厚な議論を2日間、合計10時間以上にわたって行いました。
このページでは、開館記念ラウンドテーブル「美術館学芸員がいま相談したいこと」の公開にちなみ、「プレトーク」「シンポジウム」「ラウンドテーブル」の3つの企画を束ねて紹介し、開館記念として行われたそれぞれのトークを振り返るとともに、各トークの詳細をご紹介します。
開館プレイベント
プレトーク「近現代とは何か? ―コレクション、地域、歴史から考える美術館」
当館が展示・収集する作品の「近現代」という基準は、どのように誕生し、どのように美術館に関係してきたのでしょうか。現代という時代の転換期のなかで、近代・現代という時代区分を美術館のコレクションの対象とするとき、その言葉に示されるビジョンとは一体何か。開館記念シンポジウムに先駆け、当館と同じく近代から現代まで広くコレクションし、研究・紹介してきた海外の2つの美術館のキュレーターによる、美術館と地域の実践から「近現代」とは何かを考えるレクチャーを収録しました。
「近代と現代のあいだ:欧米の外からの視点」
(原題:Between modern and contemporary: perspectives from outside Europe and North America)
講師:ルーベン・キーハン (Reuben Keehan) 氏
クイーンズランド州立美術館|現代美術館 アジア現代アート担当キュレーター(Curator, Contemporary Asian Art, Queensland Art Gallery | Gallery of Modern Art)
「交錯する、ふぞろいな、複数の物語 —コレクションから考える東南アジア美術の『近代』と『現代』
講師:堀川 理沙 氏
ナショナル・ギャラリー・シンガポール ディレクター(キュレトリアル&コレクションズ)Horikawa Lisa (Director (Curatorial & Collections), National Gallery Singapore)
聞き手:田村 かのこ(Art Translators Collective代表)、大下 裕司(大阪中之島美術館学芸員)
コーディネーター:岡部 理加
映像編集:加藤 文崇
開館記念シンポジウム
「日本の美術館が収集した『近現代』-戦後、バブル、コロナ禍に対峙して」
「もはや戦後ではない」というフレーズが生まれた50年代や、バブルの好景気に沸いた80年代といった節目に、これまでも日本では多くの美術館が開館してきました。
今日、日本は「失われた30年」と呼ばれる経済停滞、数多の自然災害、そしてコロナ禍を経験し、生活や価値観は劇的に変化しました。そんな時代に求められる美術館像とは一体どのようなものなのでしょうか。美術館には、それぞれの時代に収集されたコレクションがあります。日本の戦後美術館史、そしてその中で収集された「近現代美術」作品を振り返りながら、これからの美術館像についてのディスカッションを行いました。
開催日時:2022年2月12日(土)13:30 – 17:00
会場:大阪中之島美術館 1階ホール
登壇者
笠原 美智子(アーティゾン美術館副館長)
拝戸 雅彦(愛知県美術館館長)
宮下 規久朗(美術史家・神戸大学大学院人文学研究科教授)
菅谷 富夫(大阪中之島美術館館長)
*登壇を予定していた寺口 淳治氏(広島市現代美術館館長)は当日欠席となりました。
モデレーター:田村 かのこ(Art Translators Collective代表)
コーディネーター:岡部 理加
映像編集:加藤 文崇
写真:麥生田兵吾
開催時のページ 「日本の美術館が収集した『近現代』-戦後、バブル、コロナ禍に対峙して」*申込み受付は終了しました | 大阪中之島美術館 (nakka-art.jp)
開館記念ラウンドテーブル
「美術館学芸員がいま相談したいこと」
日本各地の美術館の若手学芸員が集い、これからの美術館についての濃厚な議論を展開する『開館記念ラウンドテーブル「美術館学芸員がいま相談したいこと」』。2022年3月12日、13日の2日間、10時間以上にわたって実施されたこのラウンドテーブルでは、美術館のコレクションについて、常設展と企画展、鑑賞者との向き合い方、展示空間についてなど、美術の現場を創り支える学芸員ならではの、さまざまな問題提起がなされました。その模様を約2時間の映像に凝縮し、公開します。
実施日:2022年3月12日(土) – 13日(日)*非公開で実施
会場:大阪中之島美術館 1階ホール(両日)
出席者
塚崎 美歩(八ヶ岳美術館・原村歴史民俗資料館)
中川 千恵子(十和田市現代美術館)
成相 肇(東京国立近代美術館)
町田 つかさ(和泉市久保惣記念美術館)
山田 隆行(京都市京セラ美術館)
大下 裕司(大阪中之島美術館)
共同モデレーター
長谷川 新(インディペンデントキュレーター)
田村 かのこ(アートトランスレーター)
映像監督:宮澤 響(合同会社アロポジデ)
撮影:飯岡 幸子、高橋 由衣
録音:藤口 諒太
録音助手:鈴木 真理
コーディネーター:岡部 理加
協力:若山 満大(東京ステーションギャラリー)
画像提供:十和田市現代美術館
写真:麥生田 兵吾
長谷川 新(インディペンデントキュレーター)
撮影:黑田 菜月
はせがわ・あらた
1988年生まれ。インディペンデントキュレーター。京都大学総合人間学部卒業。主な企画に「無人島にて—「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」(2014年)、「パレ・ド・キョート/現実のたてる音」(2015年)、「クロニクル、クロニクル!」(2016-2017年)、「不純物と免疫」(2017-2018年)、「STAYTUNE/D」(2019年)、「グランリバース」(2019年-)、「約束の凝集」(2020-2021年)など。国立民族学博物館共同研究員。日本建築学会書評委員。PARADISE AIRゲストキュレーター。相談所SNZ。
田村 かのこ(アートトランスレーター)
たむら・かのこ
Art Translators Collective 代表 アートトランスレーター。アート専門の翻訳・通訳者の活動団体「Art TranslatorsCollective」代表。人と文化と言葉の間に立つ媒介者として翻訳の可能性を探りながら、それぞれの場と内容に応じたクリエイティブな対話のあり方を提案している。アーティスト・イン・レジデンスPARADISE AIRメディエーター、NPO法人芸術公社所属。
企画・制作:大阪中之島美術館